記事詳細

【中本裕己 エンタなう】“平成の恋愛大河ドラマ” 泣くものかと身構えても涙腺がゆるむ 映画「糸」

 中島みゆきの国民的ヒット曲をモチーフに、泣かせにかかる映画「糸」(公開中)。泣くもんか、と身構えて席に座るも完敗。平成の世で、ただ平凡な幸せを求める男女の恋愛大河ドラマに何度も涙をぬぐうことになった。

 今をときめく菅田将暉と小松菜奈がW主演。平成元年生まれの漣と葵は、北海道育ちの13歳。夏祭りの夜に花火の下で出逢う。葵の家族問題から初恋は引き裂かれる。21歳になった漣(菅田)は、友人の結婚式が開かれた東京で葵(小松)と再会したのも束の間。漣は北海道でチーズ職人に、葵は東京、沖縄、シンガポールと人生の舞台は交わらない。運命に翻弄された末、平成最後の日に最接近する2人の運命の糸は結ばれるか…。

 だれの人生にも起きうる喜怒哀楽を、ことさら劇的に描かず、長尺をテンポよく場面転換してゆく瀬々敬久監督の平成絵巻は飽きさせない。9・11、リーマンショック、東日本大震災をくぐりぬけ、市井の男女がたくましく生きていく姿は、劇中歌の「ファイト」にも重なる。

 ぼんやりした佇まいだけで芝居になる静の菅田と、数々の経験を経て容姿が変貌してゆく動の小松。そして、2人と密接にかかわる役柄の榮倉奈々は、役作りにあたって過酷な減量に挑み女優魂の輝きを強烈に残した。

 出逢いの糸をつなぐ大切さとともに、歌詞の2番に登場する心の「ささくれ」を癒やす存在に、涙腺が緩みっぱなしだ。(中本裕己)

関連ニュース