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【中本裕己 エンタなう】色あせない圧倒的スケールと臨場感 ドキュメンタリー映画「第50回全国高校野球選手権大会青春」(1968年)

 お盆休みの時期、ドキュメンタリー映画「第50回全国高校野球選手権大会 青春」(1968年)がリバイバル上映された。巨匠・市川崑監督が「東京オリンピック」の後に製作した隠れた名作である。

 いま見てもスケールが違う。脚本には、井手雅人・白坂依志夫・伊藤清・谷川俊太郎が結集し、音楽は山本直純が担当。50回大会の開会式から決勝、そして地方の練習風景まで、望遠、ハイスピード、ズーム、広角など二十数台のカメラが迫る。安易に空撮できるドローンカメラには、映像の美しさで圧倒的に勝っている。選手の息づかい、スライディングしたときの土ぼこり、アウトを宣告する容赦ない審判員の声まで細かくマイクが拾い上げる。

 日大一高の主将による選手宣誓は、「スポーツマンシップに則り、正々堂々、試合することを誓います」と真っ直ぐ純朴。アルプス席の応援合戦は、ブラスバンドやチアガールより、シャモジをかきならす広島・広陵高校など豊かな郷土色が目立っていた。

 地方大会では暑さや寒さに耐える姿、強豪校での熾烈なレギュラー争いが浮かぶ。京都・平安高校では、太平洋戦争のラバウルで右手首を失ったOBが義手に乗せた球で、部員たちにノックする姿が映し出される。

 静岡商の1年生エース・新浦寿夫が熱投むなしく、大阪・興国に0-1で敗れる決勝戦も臨場感たっぷりに再現。みんなが今年見たかった高校野球の原点は、ここにある。(中本裕己)

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