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【鎮目博道 テレビ用語の基礎知識】「飛ぶ」 料理番組ADが大根に刻んだ「探さないでください」 (1/2ページ)

 テレビ業界で、「飛ぶ」のは鳥でも飛行機でもありません。一番多いのはADです。ディレクターの場合もあります。「誰々が飛んだらしいよ」的な噂は、飲み会のたびに1回は聞くくらいの頻度でよくある話です。

 先輩のタバコを買いに行ったままADが戻ってこなかったとか。ディレクターが出張ロケで多額の仮払いのお金を持ったままいなくなったとか。編集が佳境だというところでディレクターが謎の体調不良で行方不明とか。そういう「あるある」を目の当たりにして、僕たちは今日も「ああ困ったねえ。やっぱり飛んだねえ」と力なく笑うのです。「誰がこの事態のケツを持たされるんだろう」という恐怖に打ち震えながら。

 とある制作会社の人に聞いて印象深かったのが、料理番組のADさんが飛んだときの話。大根に「探さないでください」という文字が彫られていたそうです。スタッフみんなで、「あの子が作ったものの中で、一番面白かったのがこの大根かもしれないね」と言いつつ泣き笑い…。

 最近あまりによくADが飛ぶので、腫れものに触るように大切にする番組が増えました。「働き方改革」と上に言われて、雑用まですべて自分で抱え込んで苦しんでいるディレクターの多いこと。今の若い人はそもそもテレビの仕事に憧れも何もないので、少し厳しく注意すると即座に飛んでしまいます。

 ある朝、突然お母さんがビデオカメラとパソコンとハードディスクを返しに制作会社にやってきて「うちの子が辞めたいと言ってます」と言われた…なんていうのは、日常茶飯事です。

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