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【中本裕己 エンタなう】又吉直樹の人気小説を山崎賢人と松岡茉優が好演、若手の脇役陣もキラリ 映画「劇場」

 「火花」で芥川賞を受賞する前から作家・又吉直樹が書き始めていたベストセラー小説を行定勲監督が映画化した「劇場」(公開中)。劇作家を目指す青年の迷いと、それを支える恋人の破滅的な青春の苦悩がぐいぐいと迫ってくる。

 学生時代からの友人と劇団を立ち上げた永田(山崎賢人)は、前衛的な作風が理解されず、理想と現実の狭間でもがいていた。ある日、街角で同じスニーカーを履いている沙希(松岡茉優)を見かけ声をかける。女優を夢見て上京した沙希は、服飾を学ぶ学生。永田が沙希のアパートに転がりこんで恋は始まる。

 お金がなく沙希のバイト代で自分探しを続ける永田。後ろめたさから斜に構えて格好をつけ、悪態をつく様子はどこか文人的で、演劇の街・下北沢が昭和にタイムスリップしたようにも見える。

 尽くし続ける沙希のケナゲさと対照的に、浪費家でヒモのような永田が、それでも時折、求道者のように見えるのは、沙希の夢が投影されているからだろう。そんな生活にも破綻は訪れる。

 何者にもなれない男と婚期を逃す女。年月とともに、やさぐれていく移ろいを山崎と松岡は、天才的な憑依(ひょうい)で演じる。映画は、ただ暗いだけの青春期ではなく、「ラ・ラ・ランド」を日本流に解釈したような、切ないラストシーンを含めて完成度は高い。

 劇団員仲間を演じる寛一郎、伊藤沙莉、さらには今をときめく「King Gnu」の井口理といった若手の脇役陣もきらりと光っていた。(中本裕己)

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