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神父に性虐待を受けた被害者たちの告発 「グレース・オブ・ゴッド告発の時」17日公開

 17日公開の社会派映画「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」は題材の重さにもかかわらず、エンターテインメント性も強く一気に見せる。初夏一押しの作品だ。映画で扱われた事件は裁判にもなり、被告となっている神父が、本作の上映延期を求める裁判まで起こしたほど。第69回ベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝いたが、表現の自由をめぐる論争を引き起こすなど、フランス国内では話題沸騰中の問題作だ。

 ドラマは、前述した渦中の神父が1971年から91年にかけ、80人以上の少年に性暴力を働いた事実を追いながら、大人になった被害者たちが、いかにして神父を告発するに至ったかを描く。

 こう書くと第88回アカデミー賞で、作品賞と脚本賞を受賞した「スポットライト」(15年)を思い浮かべる人も多いだろうが、今回主役となるのは、敏腕の新聞記者たちではなく、被害者たち(演じる俳優はメルヴィル・プポー、ドゥニ・メノーシェ、スワン・アルロー)とその家族。

 本作では、被害者たちがSNSを使い連絡を取りながら、互いの結びつきを深めていくため、既成のマスコミによる力でなく、個人による情報発信力が運動を生み出し、物語を牽引(けんいん)していく。今、世界で起きている情報革命のうねりを感じさせる作品といえよう。

 もうひとつ注目すべきは、欧米社会でのカトリック教会のもつ権威や、地域コミュニティーに対する絶大な影響力についてだ。これは、日本の場合と異なるとはいえ、地域社会に根を張る保守的風土に置き換えれば、今の日本にも十分当てはまるのではないか。権威主義や事なかれ主義と闘う人々を描いたドラマと見れば、わが国民にも実に教訓的に見えてくる。

 フランスワ・オゾン監督はこれまでの作風を一変させ、社会派ドラマを創り上げた。そのチャレンジ精神は高く評価されるべきだろう。 (瀬戸川宗太)