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【ぴいぷる】明日の私に吹く風は… 小説家・乾ルカ、非現実的な描写から一転「明日の僕に風が吹く」上梓 (1/3ページ)

 ■母の一言

 小説家への一歩は母親の、「そんなにヒマなら小説でも書いてみなっ」の売り言葉だ。買い言葉は「なら書いてみようかなぁ」と、何とも弱々しいものだった。

 ワープロに向かいキーをたたき、100枚の原稿用紙のマス目を埋めた。その後、別の作品を学生時代に愛読していた少女向け小説「コバルト文庫」の「ノベル大賞」に応募、最終選考まで残ることになる。

 短大の推薦で銀行員となったが体調をくずしてすぐに退職。放送大学や官公庁の職員、北海道大学の臨時職員などをいずれも任期満了で辞め、次の職探しに奔走…のはずが、『占星術殺人事件』(島田荘司著)、作家アリスシリーズ(有栖川有栖著)、筒井康隆の『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』などの著作世界に時間を忘れて迷い込んでいたころの話だ。25歳のときだった。

 今でも書くことは生きることと重なる半面、現実逃避の面があるという。

 「ひとつ年上の姉はプロトタイプの美人でかつ優等生。一次試験で国語を大ミスしたのに北大現役合格を決めたんですから。物心ついたときから周りからはいつも出来のいい姉と比較され、中学生のときには先生に『お姉さんとお母さんは美人なのに、あなたはねぇ』と言われてしまい…。自分は何の取りえもないダメな人間だと随分落ち込んだものです。その反動からか、家では思うようにならないとギャーッと反抗し、完全な内弁慶になっていました」

 幼いころ、蒔(ま)かれたダークでひりひりとした感情の種が、次第に芽吹いてゆく。そして相変わらずの偏食、動物の死骸などに対する好奇心-。

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