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【ぴいぷる】人の人生を預かる覚悟 「ザ・ノンフィクション」チーフプロデューサー・張江泰之氏 (1/3ページ)

 それは1本の電話から始まった。昨年6月、フジテレビ系の特番「追跡!平成オンナの大事件」で北九州連続監禁殺人事件を扱ったところ、放送翌日、犯人の息子を名乗る男性から「面白おかしく描くのはやめてほしい」と抗議の電話が寄せられ、担当の張江泰之チーフプロデューサーが対応した。

 「彼は2時間、思いのタケをぶつけてきました。これは1回で済む話ではないと感じ、自分の携帯の番号を教えました」

 2002年に発覚した同事件は、主犯の松永太被告(当時)の拷問と虐待によるマインドコントロールの下、内縁の妻・緒方純子被告(同)の家族らが監禁され、家族同士の殺し合いを強制されて7人が死亡、遺体も解体されて海に捨てられるという史上まれに見る凶悪な犯罪だった。最高裁で松永被告の死刑と緒方被告の無期懲役が確定。電話をかけてきたのは、松永死刑囚と緒方受刑者の長男だった。当時、24歳になっていた。

 「『なぜ自分に取材に来ないのか』と言ってましたが、こちらも事件当時9歳だった人の取材はあえてしなかったわけです。ただ、彼の言い分もわかるので『申し訳ない』と謝りました。まさか謝罪されるとは思ってなかったのか、驚いてましたね」

 何度も会話を重ねるうちに、「大人は信用できない」と言っていた彼も徐々に心を開いてきた。

 「頭の回転が速く、きちっとした日本語で話すんですよ。ときには威圧感もあって、僕の答えを想定して二の矢を放ってくる話の運びも巧み。手ごわい相手だと感じました。そういうところが冷酷な父親に似ていると本人も認識していて、不安に思っていたようです」

 最初の電話から2週間後、2人は北九州空港の喫煙室で会う。

 「初対面で彼は、たばこを吸いながらニヤッと缶コーヒーを差し出しました。いまだに忘れられませんね」

 彼は「張江さんなら、インタビューされてもいい。腹を決めた」と言った。後日、北九州市のホテルで2回、計10時間にわたるインタビューが行われ、10月にドキュメンタリー枠「ザ・ノンフィクション」(東京地区は日曜午後2時)で2週にわたって放送した。

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