記事詳細

【中本裕己 エンタなう】規格外の喜怒哀楽が突き刺さる 映画「焼肉ドラゴン」

 何とうるさくて、熱い映画だろう。怒声、悲鳴、爆笑、号泣…つまりは喜怒哀楽が規格外の「焼肉ドラゴン」(公開中)は、人気舞台をその空気感のままスクリーンに移した鄭義信原作・脚本・監督による人情劇である。

 舞台は、高度経済成長期に取り残されたように在日韓国人が肩を寄せ合っていた関西のとある横丁。カタコトの日本語、韓国語が折り重なった在日1世、2世の親子・兄弟・他人のケンカに加えて、間近にある空港から離着陸する飛行機の爆音が加わる。ツケで飲みにくる常連客の口は悪いが人情に厚く、どんな状況でも明日を信じて強く生きる人々のエネルギーに満ちている。

 とくに井上真央、大泉洋、真木よう子らが全身から感情をぶつけ合う台詞の応酬は、舞台を客席で見ているようだ。対して、韓国の名優キム・サンホが演じるアボジの静かな口調は、裏側に込められた壮絶な半生が物語終盤に効いてきて胸に突き刺さる。

 映画に描かれるのは、大阪万博が開かれた1970年の翌年まで。当時の景気を反映するように飛行機の爆音は、長距離のジェット機だけでなく、映らないところで、YS-11やフォッカーF-27フレンドシップあたりを思わせるプロペラ機の音もきっちり入っている。かき消されないように、叫び続ける末っ子の少年・時生を演じるのは、本作で俳優デビューとなる大江晋平。明るく切ないキャラクターを好演している。(中本裕己)

関連ニュース