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【中本裕己 エンタなう】ヒロインは敵と味方を作りたがる米社会の犠牲者? 映画「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」 

 映画「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」(公開中)の中身が思った以上に凄まじい。

 米国人のフィギュアスケート女子選手として初のトリプルアクセルに成功し、2度の冬季五輪に出場したトーニャ・ハーディングの半生を描く。鬼気迫る主演を務めたのはマーゴット・ロビー。

 白人貧困家庭に育ったトーニャは鬼母に徹底的にしごかれる。コーチにも毒づく鬼母。幼女時代にリンクでの特訓に目を光らせ、「トイレに行かせて」と懇願するトーニャを許さず、お漏らしする場面が痛々しい。年ごろになって、母から逃げるようにすがった男は、DV夫。恵まれない環境に翻弄されながら、たくましく生き抜く姿は、まさに日本で言うところの“ヤンキー”だ。

 米国内の大会ではZZトップをバックに氷上を舞い、茨の道を突き進む彼女を励ますようにハートの「バラクーダ」が流れる。オペラやクラシックの名曲は似合わない。ロックとくわえタバコが似合う姐御スケーターは頭角を現す。だが、まとわりつく“バカども”に、けしかけられた形でのナンシー・ケリガン襲撃事件は、バラエティー番組のB級事件簿のようにゲスな目線で描かれ、笑いながら呆れ果てた。

 そんな中でも、磨き抜かれたトーニャの技だけは“本物”だ。スキャンダルまみれから這い上がる雑草魂に少々同情してしまう構成が見事。敵と味方を作りたがる米社会の犠牲者なのか!? アカデミー賞助演女優賞を得たアリソン・ジャネイの憎々しい鬼母役も必見だ。(中本裕己)

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