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【大人のエンタメ】小津、市川準の世界観…平成生まれの監督が昭和の「情景」を描く『四月の永い夢』 28歳・中川龍太郎監督

 12日公開の「四月の永い夢」は、小津安二郎や市川準に通じる“小市民映画”の佳品だ。非常に抑制された演出で、昭和という時代への郷愁も誘う。これを手掛けたのが平成生まれの監督というから驚く。

 3年前に恋人を亡くし、中学校の教師を辞めた初海(朝倉あき)。今は蕎麦屋でアルバイトをしながら、静かに暮らしている。そんなある日、亡き恋人の母(高橋惠子)から手紙が届く。それを機に、止まっていた時間が少しずつ動き始める。

 市井に生きる人々のささやかな日常を淡々と描きつつ、人生の深みに切り込む-。小津や市川が得意としたジャンルに挑んだのが、中川龍太郎監督(28)。産経新聞の「朝の詩」に投稿を続け、17歳で詩集を出版した詩人でもある。

 「愛嬌を振りまいたり、愛想笑いが顔に張り付いたような女性を撮りたいとは思わない。壁のある女性のほうが僕は魅力的だと思う。それが結果的に、今風じゃないヒロインになった」と語る。

 現代の東京が舞台だが、初海の住むアパートにはテレビもエアコンもない。ちゃぶ台や扇風機を置き、風鈴を吊り下げる。趣味はラジオを聴くことで、銭湯にも通う。

 古き良き昭和を知る世代には懐かしい光景が広がる。中川監督は昔の映画やテレビドラマを通して、あの時代に憧憬の念を抱いていたという。

 「いいことばかりではないけど、“何かが始まる”という予感を大いにはらませていた時代が昭和だったのではないでしょうか。新しい元号を迎えるに当たって、昭和という時代の良かったものを航海の羅針盤にするべきだと感じています」

 派手さはないが、しみじみとした余韻を残す本作。昨年のモスクワ国際映画祭では国際映画批評家連盟賞などに輝いた。(田中宏子)

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