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“俳優デル・トロ”の人間的な強さ表現、戦闘シーン描かず戦地の現実みせる 10日公開「ロープ 戦場の生命線」

 10日公開の『ロープ 戦場の生命線』は、過激な戦闘シーンを描かず、じんわりと訴えかけてる反戦映画だ。

 1995年、停戦直後のバルカン半島。ある村で井戸に死体が投げ込まれ、生活用水が汚染されたので「国境なき水と衛生管理団」の職員、マンブルゥは死体の引き上げを試みるが運悪くロープが切れてしまう。

 死体の腐敗が進むと、水を浄化するのが難しくなるため、一刻も早く代わりのロープを手に入れなければならない。職員たちは早速もっと頑丈なものを探し始めるが、停戦合意がなされたとはいえ、付近はまだ小規模戦闘が続き、至るところに地雷が埋められている危険地帯。安全な場所で探すのとはわけが違う。

 職員のリーダー、マンブルウを演じるベニチオ・デル・トロは、キューバの革命家、チェ・ゲバラ役で高い評価を受け、麻薬戦争をテーマとした『ボーダーライン』(2015年)では冷徹な殺人のプロを演じているが、むしろ今回の国際援助活動家の役に“俳優デル・トロ”の人間的な強さが表れているように感じた。

 助演のティム・ロビンスにも同じような印象を持ったが、おそらく戦地での派手な戦闘や暴力シーンを意図的に排除し、等身大の人物像を画面に映し出そうとしたからだろう。出演者の素顔がいい意味で出るようなつくりとなっている。

 監督のフェルナンド・レオン・デ・アラノアは「私は何度となく、紛争地域で援助活動家と一緒に仕事をしている」と述べているほどだから、本作のようなドラマは得意の分野といっていい。意外性に富んだユーモラスな結末も、ごく自然に思いついたのではないか。

 ところで、出演俳優の顔ぶれをはじめ、クライマックスで、反戦ソング「花はどこへ行った」が効果的に使われているくだりを見れば明らかなように、本作は久しぶりの正統派反戦映画。

 ただし反戦テーマを前面に掲げる類ではない。あくまで戦地で地をはうような援助活動を続ける人々に焦点を絞り込んだ作品。そのため、製作サイドの反戦の思いがじんわりと心に響く映画に仕上がっている。(瀬戸川宗太)

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