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【中本裕己 エンタなう】ただのレイプ犯探しではない人間の業えぐる 前半から目が離せない映画「エル ELLE」

 フランスの名女優イザベル・ユペールがレイプ被害の主人公を演じ、「氷の微笑」のポール・バーホーベンが監督した映画「エル ELLE」(公開中)は、サスペンスともスリラーとも言える衝撃的な作品だ。

 美熟女のミシェル(ユペール)はある日、自宅に侵入した覆面姿の暴漢に力づくで犯される。が、なぜか、警察に届けることなく平静を装う。

 ミシェルは「エロゲー」を製作する会社を経営し、同僚女性の夫と不倫中。元夫、隣人、部下、老いた母の若い恋人…身近が怪しいと踏んだミシェルが独りでレイプ犯をあぶり出していく前半部分から目が離せない。

 だが、この奇異な映画の本質は犯人探しではない。奔放なオトナの男女たちが醸し出すドロドロした人間関係や個人の欲望、衝動といった心理描写にあるのではないか。ワイドショーの不倫報道が100倍陳腐に思えるほど、映画が紡ぎ出す人間の業は深淵なのだ。

 ともすれば、エグくて下品な題材をセンスの良い会話や音楽が肯定する。ふとした場面で、テレビ画面から流れているのが、サイモン・ラトルが指揮するベルリンフィルの「田園」だったり。

 後半になるに従い、ユペールの演技力が全開。ハリウッドで誰もやりたがらなかった役に自ら名乗りを挙げただけのことはある。オン年79歳のバーホーベン監督も、最新の映像技術を取り入れたり、古典的な「猫は見ていた!」演出を挿入したり。映画って面白い、と再認識。(中本裕己)

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